8月のある暑い朝、A氏は通勤の足となっているカローラで会社への道を急いでいました。
ちょうど、浜松市内を横切る国道一号線の交差点にさしかかったときだ。
A氏にいわせるとものすごいスピードで右側から追い越しざまにバンパーをこすった車がありました。
A氏のカローラは大きなショックを受けたが、何とか車を立て直し、路肩に寄せた。
一方、追い越したほうのB氏は、この春に就職したばかりの新入社員で、前の晩のあまりの暑さに寝つきが悪く、少し寝坊してしまった。
遅刻しちゃいけないと朝食もとらず、イライラしながらいつもよりスピードを出していました。
ボーンと左側にショックを受けたときは、内心"しまった"と思ったが、「事故ったときは決して弱気になっては負けだ、とくにおまえは気が弱いほうだから気をつけないと駄目だぞ」という学生時代の先輩の言葉を思いだして、"そういえば向こうの車だって右にちょっとはみ出してたな"と、必死に強気の顔をつくって外に出た。
相手の車を見るとバンパーが少しへこんだだけの様子。
これなら大丈夫、むしろ、ボディに傷がついた自分のほうが被害者なくらいだ、と意気込んでカローラに向かって行いました。
A氏のほうはというと、"まったくとんでもない車がいたもんだ"と、いつになく道徳感に燃えて、こちらは本物の怒りの表情で外に出た。
「なんだおまえは!どんな運転してるんだあ」
「そっちこそ、はみだしてたらたら走ってんじゃないよ」と、怒鳴り合ってふと顔を見合わせた瞬間、「あれ、君か」「あっ、課長」なんと二人は同じ会社の、しかも同じ課の上司と部下だったのだ。
そこで、急に両者の表情がゆるみ、とにかく会社に行って穏便にすませようと、二人で並んで走り去った。
まあ、上司と部下が事故を起こすなんてことはめったにあることではないが、それにしても、お互いの車はいつも見慣れているはずなのに、どうして顔を見るまで気づかなかったのでしょうか。
合宿免許でもしっかり、周りをみるようにと学んでも、やはりとっさの事となると気がつかないものなんですね。
心理的なものだそうですが・・・。