保健婦さんやヘルパーさんに引っ張られて、Aさん宅を訪ねる。
2人も今日がはじめての訪問で、つい先日、民生委員から電話で相談があったケースだという。
電話での話では、Aさんは78歳の女性、脳卒中で倒れ、病院に運ばれたのだそうだ。
ところが、わずか1週間で退院してきたという。
農繁期で家族が付き添いにつけないし、家政婦を雇う余裕もないからというので、病院が止めるのも構わず、帰ってきたという。
家の玄関には、この町では珍しく鍵がかかってはいるものの、部屋の戸まではロックしておらず、家族の不在のまま、Kさんの部屋にあがりこむこととなった。
考えてみれば、あつかましい話です。
本人は暗い部屋の布団で寝ています。
ヘルパーさんが声をかける。
「Aさーん、Aさーん」
しかし、Aさんは目を閉じたままで、その代り、口を開いています。
「帰りましょうか」と私。